株式会社ティーケーピー 河野 貴輝

Guest Profile

河野 貴輝(かわの・たかてる)

1972年、大分県生まれ。慶應義塾大学商学部卒業後、伊藤忠商事株式会社為替証券部入社。日本オンライン証券(現・カブドットコム証券)、イーバンク銀行(現・楽天銀行)の立ち上げプロジェクトに参画し、ITと金融の融合事業を手がける。イーバンク銀行で取締役営業本部長等を歴任した後、2005年8月、株式会社ティーケーピーを創業。11年、TKPガーデンシティ品川(旧ホテルパシフィック東京1F宴会場)の運営を開始。ニューヨーク、上海にも進出を果す。現在、全国1,288室、93,438席(2014年3月現在)を運営する業界のリーディングカンパニーである。

特集保養施設や研修センターをシェアリング。キャッシュ創出、コスト削減、研修効果アップでWin-Winの関係を築く

1.流動的な運用でキャッシュを生み出す方法

 ここ最近、個人資産の流動的運用が叫ばれています。政府も高齢者の持つ莫大な金融資産が市場で十分に活用されておらず、日本経済の活性化にとって有用に働いていないことを危惧してか、さまざまな施策を打ち出し、運用や流動化の促進を図っています。
 実は企業にも流動的運用ができていない資産を持ち合わせているケースが多くあります。企業の場合、資産の流動化は資産の売却や証券化を意味し、キャッシュを厚くして経営資源の集中や借入金の返済などで、より健全性を保つ目的で行ないます。
 しかし資産を保有している企業には、売却や証券化という流動化ではなく、流動的な運用でキャッシュを生み出す方法を考えているところもあります。
 たとえば、生損保業界では顧客から(掛け金などの)預かり資産を優良な不動産物件に変え、その物件を運用していくことで利回りを求め、さらなる付加価値を生み出してきました。しかし、近年は経営統合や合併などによる業界再編が行なわれ、一等地にある自社ビルが運用益を生み出せず、宙に浮いている例も少なくありません。また社員用の保養施設や研修センターの場合、年間を通じてほんの一時期の利用にとどまっているケースも多くあります。
 企業は営利目的で成り立っています。その意味ではすべての資産は有効に活用され、かつ稼ぐことに忠実であるべきと考えたとき、先のような状況は「もったいない」の一言に尽きます。

2.企業保有の施設をシェアし、お互いにハッピーになる

 TKPはレンタルニーズという大市場へ向けて、利用企業およそ8万社のデータベースを基に、よりTKPの施設やサービスを活用してもらうべくさまざまな提案をしています。他方、不動産物件を保有する企業に対しては、遊休施設や物件の活用を私たちTKPに任せてもらいたいと考えており、便益ある提案を続けています。
 TKPは今般、自社で研修センターや保養施設などを保有する企業へ向け、当社を利用してもらうことの提案を行なってきました。これはTKPのコア事業とのシナジーが見込める、新しいチャレンジでもあります。
 このような施設を保有する企業が、実際にそれらを利用する期間には限りがあり、その期間以外の利用日程が埋まっていないのが現実です。つまり稼働率が限定的となるところがもったいないわけです。保養施設や研修センターも企業が持つ重要な資産であり、経営資源の一つです。それを有効に利用し、キャッシュが生み出せるとしたら、その企業にとっては有益になります。平たく言えば、ほとんど利用されない期間にTKPが借り上げることで、その期間をキャッシュに変えましょうという提案です。それを具体化したのが新事業であるTKPリゾートなのです。
 実はこの研修センターや保養施設のニーズはこれからますます多くなると以前から想定していました。当社をよく利用している企業の方には、TKPの有効活用に関し担当営業が常にヒアリングを行なっています。そうした活動のなかで、研修を行なう企業が意外と多いということに気づかされました。ホテル研修を行なう企業には、自社施設を保有していない企業が多いわけですが、かつては保養施設や研修センターを保有していたものの、現在は売却してしまい、そのためホテルで研修を行なっているというところもあります。
 しかし、料金の高いホテルに宿泊してまで社内の研修を実施する必要があるかといえば、実際のところあまりないでしょう。つまり、ホテルのほかには思うような研修を行なえる施設がないからであって、利便性の高い研修会場があれば、料金の高いホテルをわざわざ利用する必要はありません。
 TKPはこのギャップに着目しました。研修施設を利用したい企業ニーズに応えれば、このマーケットは確実に拡大すると感じたのです。過剰なサービスはないけれど、既存の企業保有施設を割安な料金で研修施設としてシェアリングできれば、利用マーケットは広がっていくという発想ですが、これこそがTKP流の考え方です。

3.TKP提案の共通体験で企業人に有用な連帯感を育む

 このTKPリゾートによる研修施設シェアリングのもう一つの着目点は、それらは大都会になくてもいいということです。むしろ自然が豊富な地域こそ、研修の利便性があると考えました。それは研修の意義が単に知識を詰め込むだけではないからです。研修におけるキーワードは共通体験であり、それにより人が輪と和をつくり、親睦を深めることができる。それが泊りがけの研修の意味に含まれているのです。
 このリベラルな時代、寮制度などでの企業人育成に、社員たちは窮屈さを感じることでしょう。しかし宿泊を伴う研修では、寮生活のような体験をそのときだけでもできますよね。共通体験によりある程度の連帯感を育むことはできます。ここに意味があるわけです。
 たとえば農業体験や魚釣り、あるいは運動会やアスレチック体験、プール利用の水泳大会、キャンプファイヤーでも共通体験になります。都会を離れて自然と向き合うことで得るものは必ずあります。それらを知識研修と組み合わせ両立させることで、仕事に生かせると考えます。
 TKPが新事業として考える宿泊施設付き研修会場は、施設の利用というハード面にとどまらず、立地を生かしたイベントプランというソフト面も同時に提供し、充実した研修ができる施設を目指しています。これは企業が保有する広大な施設と自然環境のなかだからこそできることです。都会のホテルではできない研修体験が、大きな売りとなるのです。
 4月、5月の新卒採用を対象にした研修でしか使われない施設の有効利用という発想は、保有企業のコスト削減と、新たなキャッシュを生む機会を創出します。また、持たざる企業にとっては、都市部のホテルから大自然に囲まれた場所に研修の場を変え、割安料金で実りある研修を実現することが可能になります。TKPリゾートはこれらの企業ニーズ同士を結びつけたものなのです。
 企業研修専門の宿泊施設会場と充実したイベント企画のパッケージ。新しいマーケットを創造するための企業ニーズの掘り起こしは、まだ始まったばかりです。

TO PAGE TOP